Takaのアメリカ留学日記

2019年8月からアトランタに交換留学。アメリカ生活、アメリカと日本の社会問題について気ままに書いていきます。

【社会学コラムNo.12】女性は”モノ”?アメリカPOPソングにはびこる偏見とは

社会学コラムNo.12女性への偏見

 

皆さんは日本社会で女性に対してどのような偏見があると思いますか?

家事をするべき?

おしゃべり?

おしとやか?

 

今回はそんな女性に対してのアメリカでの偏見を

アメリカのPOPソングのミュージックビデオから見る話です。

 

 

結論:女性は“モノ”

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最初に結論を述べてしまうと

アメリカのPOPソングのMVにおいて、

 

女性は“モノ”であり”性的関心”の対象と言えます。

 

今回の参照元は“Dreamworld 3”という女性の1980~1990年代におけるミュージックビデオの性とその力関係の問題点を示したビデオです。

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”DreamWorld”という名前は完璧な皮肉で

ミュージックビデオの中は女性が性を求め、男性を誘惑し、男性からの不躾な行為にも

笑顔で喜んでいる、現実とは違う世界があります。

 

そんな現実とは全く違う世界がまかり通る男性優位な世界を"DreamWorld"と表現しているんです。

 

1990年代のミュージックビデオについてですが、現在にもかなり通じるものがあります。

 

ミュージックビデオは若者文化の発信地

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CMや看板など、色々な広告媒体があって、そのそれぞれが様々なメッセージを発信しています。

 

その中でもPOPソングのミュージックビデオは若者たちに強い影響を与えるメディアの1つです。

 

若者が好きなPOPシンガーのアリアナ・グランデやテイラー・スイフト

 

アメリカのラップ文化を引っ張る、カニエ・ウエスト、エミネム

 

彼らの曲を10代~20代のほぼ全員が知っていて、Youtubeの再生回数は20億回~30億回と圧倒的人気を誇ります。

 

そんなアメリカのミュージックビデオを見ることで、「男女のセクシュアリティとは」、「“普通”の男性と女性が何なのか」を文化がどのように教えているのかを理解することが出来ます。

 

POPソングの女性の見せ方

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POPソングのミュージックビデオで描かれる女性は

男性目線で女性が誘惑している姿や

女性が自分の体を触ってカメラ越しの相手の目をみるような姿です。

 

また、上からのカメラアングルで胸を撮影したり、下からのアングルで股を撮影すること、長い脚の間からカメラを映すカットが頻繁に使われます。

 

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そして、これが過激になると、足や胸など性的な体のパーツだけを映す

つまり、女性という人間を映すのではなく、

モノとして女性を映すようになります。

 

これがわかりやすいのがお酒の広告なんですが

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こういったお酒の広告では体の一部分だけを扱ったり

 

女性を1人の人として見るのではなく、モノとして見ています。

 

女性POPシンガーの落とし穴

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シンガーは芸術家と同様に、自分を表現してお金をもらう仕事の1つです。

 

そんなシンガーはアメリカのPOPシーンにおいて、自分のありたい姿を表現できない仕事でもあります。

 

なぜなら、POPソングのディレクターがポルノ的要素を入れることで、

性的関心の存在としてシンガーを表現させるからです。

 

肌の露出の高い服を着たり、時には服をきていなかったりするような演出や

男性を誘惑するような動作が求められます。

 

そして、この女性の”性的”役割が年々強まっています。

それがよくわかるのが、

マライア・キャリーの代表曲「All I want for Christmas Is You」

 

1994年に発表された、この曲と

2011年にリメイクされた、ジャスティン・ビーバーとのカバーを比べてみると

 

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2011年のバージョンは、ジャスティンはステージの上で歌を歌い、

下からのアングルで大きく見せる効果を使って、表現している一方で

 

マライアキャリーは前作よりもはだけ

ひたすら壁の前で肩越しに誘惑するような動作をしています。

 

さらに、上からのアングルや下からのアングルで彼女を映して

ボディパートに注目したシーンも見かけます。

 

もはや、マライア・キャリーはいるのか?

というぐらい、ひたすら誘惑してますよね(笑

 

別のDreamWorldに入ってしまえば最後

抜け出すことが出来なくなってしまうのが、この世界です。

 

男性は力をコントロールできない

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女性の”モノ”や性的存在として扱うのと同じように、

描かれる男性の姿は

パワーがあって、その力をコントロールできない、まさに動物のような存在です。

 

女性を誘拐して、拡声器で叫び散らしたり

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女性を壁や床に押し付け、酒をかけ、お尻を叩く姿をミュージックビデオの中に見ることが出来ます。

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そして、これが深刻なのは、それが同様に現実世界でも起こってしまうということ。

 

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(1:13~)

”DreamWorld”の中では、壁に押し付けても、最終的にはキスを求めてくる女性も

お尻を叩かれても笑顔を向ける女性も、現実世界にいません。

 

また、その暴力的な行為はラップの中で多くみられ、黒人男性が

危険・暴力的というイメージを膨らませる要因でもあります。

 

 

現実世界にも広がる性的暴行

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動画の最後に紹介されている数字を挙げると

  • 毎年100万人の女性がパートナーからストーカーされ
  • 5人に1人の女子大学生がレイプを受け
  • 大学キャンパス内で、90%以上のレイプ被害者が犯人をしっていて
  • アメリカでは性的暴行が2分30秒に一度起きていて
  • 6人に1人の女性が性的暴行の被害者である

 

この数字は、ミュージックビデオやテレビ、雑誌等々、様々なものが若者や大人に影響を与え、当時のアメリカの状況を説明しています。

 

そして、現在の調査では

  • アメリカでは性的暴行が1分13秒に一度起きていて
  • いまだなお6人に1人の女性が性的暴行の被害者である

のが現状です。

 

この女性を”モノ”として扱う考えの広がりが、アメリカの性的暴行の文化を加速させています。

なぜこれが起こるのか?

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このような女性の扱いがなぜミュージックビデオの中に起こるのか

 

結論:お金持ち

 

超資本主義のアメリカ社会では、結局お金が何よりものをいう社会です。

ミュージックビデオで言えば、SONY等の音楽会社がお金を出しているので

 

彼らの意向に沿ってミュージックビデオの見せ方が決まります。

 

ということはつまり

性的暴行や貧困の問題の行方も全て、お金持ちの手の中にあるとも言えます。

 

日本はどうなのか?

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個人的な見解を言えば、日本はこのような女性の描き方は

あまりないが、ないとは言えない。

というのが答えだと思います。

 

この映画を見た後に、日本のPOPソングのミュージックビデオを見てみました。

 

例えばAKB48を見ると

水着姿のAKB48のメンバーの体のパーツだけが描かれる場面は何度かありましたが

それがアメリカと比べれば少なく、ミュージックビデオを通して2,3回程度でした。

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さらに、お酒の広告やCMを見た時に

女性の部位というよりかは、女優さんとお酒を描いていて

お酒の似合う女性、お酒を一緒に飲みたい女性のような

 

人にフォーカスが当たっています。

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https://youtu.be/vEVq_Bx7_KY

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アメリカ文化の影響を受けて、多少は影響がありますが

 

日本の共通認識の中に、女性を”モノ”として扱う様子はありません。

 

昔からあるのは、男性優位な考えと、男性と女性という2元論の考えです。

 

しかし、最近のミュージックビデオを見ていると

男性でも、男らしい男性だけでなく、草食系と言われるような男性がいたり

 

テレビを見ていると

女性でも、スレンダーな女優さんだけでなく、渡辺直美さんのようにぽっちゃりした愛らしい女性も見ることが出来ます。

 

こう考えてみると、多様なジェンダーはまだまだですが、男らしさや女らしさの中では多様性が広がっているように思いました。

まとめ

以上、アメリカのPOPソングのミュージックビデオから見る女性の偏見でした。

”性的関心”を引かせる”モノ”としての扱い。

 

日本にいた時は何も気にせず、見ていた海外の歌手のミュージックビデオの中にも

社会学の種がありました。

 

よければそんな観点で1度、ミュージックビデオを見てみてください。